床がきしむ理由、知っていますか?エムプラスの現場で起きた本当の話

施工を終えて半年ほど経ったある日、
施主さんから「最近、床が歩くたびにキュッキュッと音が鳴るんです」とご相談がありました。

住まいにとって“音”というのは、単なる物理現象以上に、
人の気持ちに作用する繊細な要素です。

「安心して暮らしたいという気持ちを揺さぶるような音が、毎日の生活の中で少しずつストレスになる 」
それは決して見過ごせないサインなのです。

床がきしむ原因とは?

では、実際に床がきしむ原因には、どんなものがあるのでしょうか?

音が鳴る背景には、構造的な理由がきちんと存在しています。
私たちが現場でよく出会う「典型的なきしみの原因」をいくつかご紹介します。

  • 根太(ねだ)と床材の接合が緩んでいる
  • 床束(ゆかづか)や大引(おおびき)などの支持部材が沈んでいる
  • 湿気による木材の収縮や反り

「根太(ねだ)」とは、床の下にある横方向の木材をいいます
「床束(ゆかづか)」は床の重さを支える柱です。
「大引(おおびき)」は根太を乗せる太い梁の事です

結局のところ、きしみは床の木材が問題ということですね

こうした現象は、経年変化によるものもあれば、
施工直後でも下地の状況次第で起こることがあります。

BOSSあずき

きしみは小さなサインですが、構造の不具合に直結することもある。見逃せません

看板娘きなこ

うちの実家も冬になるとミシミシ鳴ってたなぁ。弟は毎年“今年こそ幽霊”ってビビってた(笑)

床きしみのチェックの流れ

きしみ音の正体を突き止めるには、見た目だけでは分からない部分まで丁寧に探る必要があります。
私たちが実際の現場で行っている基本的なチェック手順をご紹介します。

①音が出る位置を確認

まずは室内側から音が出る位置を確認し、歩き方や踏み方による違い、
床材の状態(浮き・反り・ゆがみなど)を目視でチェックします。

②床下に潜って確認

点検口から床下に潜って構造の状態を直接確認します。

このとき、上で別のスタッフが床を踏み、
その振動や音の伝わり方を床下から確認するという方法をとることもあります。

これは、音の発生箇所と構造の動きの関連性を、
感覚的に把握するためのとても有効な手段です。

チェックポイントは以下の通り

  • 床材と根太の接合状態
  • 床束や大引の沈み・たわみ
  • 湿気・白蟻の被害
BOSSあずき

床下で誰かに上を歩いてもらうと、接合部の動きが直に伝わってくる。理屈より、感覚的に異常を把握できる場面もある

看板娘きなこ

なんか“音を聞く”っていうより、“家の身体に触れて診察する”って感じだね〜。ドクターみたい!

見習いこはく

初めて見たとき、“まさかそんなアナログな方法で?”って思いましたけど…めっちゃ的確でした。さすが職人技です

エムプラスの現場でちょっとしたエピソード

別の現場であった出来事を少しだけご紹介します。
点検と調査のプロセスには、時に思いがけないことも起こるのです。

現場では、床のきしみの原因を確認するため、
スタッフと長年付き合いのある大工さんが、床下点検口から内部へ潜って調査を行いました。

室内から音の出る位置を特定し、床材や下地の浮きなども確認したうえで、
洗面所に設けられていた点検口を開け、懐中電灯とヘッドライトを装着して準備完了。

狭くて暗い床下に、スタッフが慎重に身体を滑り込ませていきます。
ところが数秒後、スタッフの動きがぴたりと止まりました。

「す、すみません……なんか、息がしづらくて……」

そう、閉所恐怖症になってしまったんです。
無理は禁物となり、すぐに交代

代わって入ったのはベテランの大工さん。
スルスルと軽やかに床下へ入りながら、笑ってひと言。

「慣れてきたら楽しいよ。秘密基地みたいで、ちょっとワクワクするんだよね」

その場の空気が一気に和らぐ、なんとも頼もしい一言だったようです。

やや緩みが見られる箇所を特定し、ビスでの再固定と軽微なジャッキ調整を行った結果、
きしみ音は無事に解消されました。

BOSSあずき

現場では“図面通り”にいかないことのほうが多いからね。そういう意味では、人の反応もまた“設計の一部”だと思ってるよ

看板娘きなこ

でもさ、大工さんが“慣れたら床下って楽しいよ、秘密基地みたいで”って言ったの、めっちゃ好きだった!そういう発想、癒される〜

さいごに

床のきしみという、ほんの小さな音。でもその音の裏には、
構造の微妙なバランス、素材の性質、そして職人や設計士の経験と感覚が詰まっています。

住まいは完成して終わりではなく、暮らしながら対話を続けていくもの。

私たちエムプラス建築工房は、「声なき声」に耳を傾ける姿勢を、
これからも大切にしていきたいと思います。

このコラムでは、エピソードや聞いた話、スタッフの気づき、
ちょっとしたハプニングまで、ありのままにお届けしていきます。

家づくりの舞台裏にある、ささやかだけど大切な物語たち。ぜひ、これからもお楽しみに。

BOSSあずき

設計は図面の上で完結するものじゃない。住んでからが、本当のスタートだからな

看板娘きなこ

うんうん、たとえば“床が鳴る”っていう相談ひとつにも、ドラマがあるもんね〜。家って生きてるなぁって思うよ

見習いこはく

こういうエピソード、もっと発信したいですね。“失敗も笑える話になる”って、なんかいいじゃないですか

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